【後編】イベント会場…

【後編】イベント会場担当者たちのホンネ座談会~変わりゆくトレンドへの対応を考える~

イベントの開催において重要ファクターである「会場」。場とサービスの提供を通して、イベントの成功を後押ししています。そんな会場を運営する担当者の皆さんは、どのような思いをもって、仕事に向き合っているのでしょうか。

そこで、それぞれ異なる個性が光る4つの会場から担当者の方々にお集まりいただき、座談会を実施。後編では、最新のトレンドや主催者からの要求にどのように応えているのか、また今後の展望について本音を語り合いました。

変わりゆくイベントのかたち。期待を超えるサービスの開発で対応

――最近増えている「主催者側からの要望」はありますか?また、「これが流行っている」と感じるイベントがあれば教えてください。

TRUNK(HOTEL) CAT STREET 宴会部イベント課 セールス&プランニング ディレクター 藤原諒氏(以下、藤原):コロナ禍が落ち着いた後、社内外のコミュニケーションイベントが多く求められるようになりました。厳かな着席のコース料理ではなく、立食スタイルでコミュニケーションを取りながら食事を楽しむという形が多いですね。「TRUNK(HOTEL) CAT STREET」には広いテラスがあり、外で気持ちよくお酒を飲めるので喜ばれています。

また、これまでできなかったイベントを初めて開催する企業が増えており、料理の提供方法やレイアウトについて提案しています。例えば、人数や性別、年齢層に応じた料理やレイアウトの提案を行い、満足度を高める工夫をしています。また、表彰式のコンテンツについての相談も多く、プロジェクターやスクリーンの活用方法についてもアドバイスしています。フードロスに対する取り組みとして、女性が多いイベントではデザートを多めに提供するなど、料理の内容も工夫しています。

TRUNK(HOTEL) CAT STREET 宴会部イベント課 セールス&プランニング ディレクター 藤原諒氏。2020年2月にTRUNKへ入社。主にBtoBイベントの窓口となり、打合せから当日施工までのディレクションを担当。ワンストップでのプロデュースを行い、自社施工やコンテンツ企画にも携わっている

住友不動産ベルサール 営業第3部代理店営業第1課長 阿部仁実氏(以下、阿部):ベルサールも、フードロス対策やサステナブルな取り組みに関心を持つ企業が増えています。このような企業のニーズに応えるために、われわれも様々な工夫を凝らしています。

従来は、参加人数に応じて料理の量をご用意する形式が一般的でしたが、現在当社グループ で提案しているケータリングプランは、メニューをアレンジしたり、お持ち帰りいただけたりするように工夫をしています。提供する料理を無駄なく召し上がっていただけるように心掛けています。

住友不動産ベルサール 営業第3部代理店営業第1課長 阿部仁実氏。2011年入社。住友不動産グループの「イベントホール・貸会議室」の施設運営事業を行う住友不動産ベルサールにて、広告代理店・イベント会社を担当する代理店営業部の営業として従事

シアターワークショップ 運営プロデュース部門チーフマネージャー 三田侑輝氏(以下、三田):イベントが増えてきたことで、制作会社や代理店の方が忙しくなったこともあり、会場にイベントの運営に関するすべての業務をワンストップでお任せしたいというご要望が増えてきました。そのため、ワンストップで請け負える体制づくりがますます重要になっています。シアターワークショップでは、テクニカルオペレーションやケータリングなどのサービスを一元化することで、主催者様側の負担を大幅に軽減し、スムーズなイベント運営をサポートしています。

さらに、最新の技術を導入し、イベントの質を高める努力を続けています。例えば、音響設備や照明設備、インターネットの整備や充実はもちろん、「渋谷キャスㇳ スペース」には約190インチの大型LEDディスプレイを導入するなど、イベントの参加者に充実した体験を提供できる環境づくりを心掛けています。

シアターワークショップ 運営プロデュース部門チーフマネージャー 三田侑輝氏。2011年シアターワークショップに入社。ヒカリエホールの立ち上げに携わり、イベントホールの管理運営業務に従事。現在は渋谷・青山エリアを中心に複数のホール運営を統括する。各施設に合った営業を行うと共に、そのノウハウで新規施設の開館・運営も手掛けている

代官山T-SITE GARDEN GALLERY メディアプロモーションイベントマネージャー 今岡慎弥氏(以下、今岡): 最近、コスメ系のイベントの問い合わせが急増しています。おそらく前年度に実施した大規模なイベントを見た代理店様やクライアント様が「こんなことができるのか」と知って、同様のイベントを開催するために会場を探しているのだろうと思います。

コロナ禍が収束し、マスク着用が緩和されたことで、ルージュなどの新作コスメの発表が増加しており、コスメ系イベントが増えています。一方で、数年前まではハイブランドによる利用が多く、年間で2~3社程度の利用がありましたが、「他とは違う場所でイベントを開催したい」というニーズが強く、公共施設やお寺などでコレクションを行うのがトレンドに。このトレンドの変化により、われわれの会場が選ばれる機会が減少している現状があります。

会社としてはこうした状況に若干の焦りを感じており、新しい会場の開拓を進めたいと考えています。特に、コスメやアパレルなど横のつながりが強い業種の企業と連携し、他の企業からも「ここが良かった」と評判を広げることで、新たなクライアントを獲得するチャンスを増やしたいですね。今後、ますます評判や口コミが重要な要素になるだろうと考えています。

代官山T-SITE GARDEN GALLERY メディアプロモーションイベントマネージャー 今岡慎弥氏。2011年、カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社入社。代官山 蔦屋書店の立ち上げのプロジェクトメンバーに加わる。オープン当初は前職までの経験を活かし代官山 蔦屋書店2階のラウンジAnjinにてシェフ・キッチンマネージャー業務に携わる。2016年より現在の部署に配属、現在に至る

次世代イベントの成長戦略。各会場のアイデアとビジョン

――では、最後の質問です。将来こういうチャレンジをしていきたいというお考えがあれば、教えてください。

藤原:TRUNK(HOTEL)はホテル業界をリードする存在になるために、何をしたらいいかを社員全員が常に考えています。そのためには、イベントでご利用いただいたお客様がどういった企業なのかをしっかりと理解することが非常に重要です。具体的には、お客様がどのような商品を扱っていて、どのような販路があって、どのようなビジョンやコアバリューを持っているのかを把握することです。そして、それに基づいて企業に見合ったホスピタリティを提供することを重視しています。

また、イベントを開催して終わりではなく、再び利用したいと思っていただくためにも、スタッフが提供するホスピタリティをベネフィットにしたいです。会社のビジョンや理念をスタッフが体現することで、お客様も「TRUNK(HOTEL)のスタッフのようになりたい」と思っていただけるような、刺激を受けるサービスを提供し続けたいと思います。そのためには、インナーブランディングが重要です。社員が理念を各々腹落ちさせた状態で、それをアウトプットできることが鍵だと考えています。

阿部:当社は、長年の課題として閑散期対策があります。BtoCイベントが増えてきたとはいえ、まだBtoBのイベントの方が圧倒的に多いのが現状です。特にお盆や年末年始、ゴールデンウィークなどは、全会場を稼働させることが難しいです。過去には自社で主催イベントを立ち上げ、秋葉原で「アキバ大好き!祭り」や日本橋で「大江戸ハワイフェスティバル」などを開催していました(2024年現在は休止中)。今後、良いアイデアがあれば、再開させたいですね。
三田:イベントホールは施設によって、収益や集客など使命や役割は異なりますが、稼働率だけは共通していて、稼働を最大化する事には拘っていきたいと思っています。たとえば、1日だけの大きなイベントを開催しても、その後の364日が空いてしまっては、賑わいが創出される事にはなりませんし、運営的にも持続可能ではありません。稼働を高めるためには、企業向けのカンファレンスや展示会、一般向けのコンサートやフェスティバル、地域コミュニティ向けのワークショップやセミナーなど、多種多様なジャンルのイベントを実施できる環境を整えて異なるターゲット層を引き付け、年間を通じて安定した稼働率を確保したいですね。

特に都内のように競争が激しい市場では一層重要です。2024年には、青山で新たに「P.O.Minamiaoyama Hall」を開業しましたが、都内には多くのイベントホールが存在し、それぞれが独自の魅力を持っています。そのホールが選ばれ続けるために、常に最新のトレンドを取り入れ、施設の魅力を維持し続けたいです。

今岡:ガーデンギャラリーでは蔦屋書店と連携し、主催イベントを定期的に開催しています。これらのイベントは、地域の文化やアート、教育など多岐にわたるテーマを取り扱っており、来場者に多様な体験を提供しています。大きなイベントの年間計画を立てることで、施設全体の認知度を高め、より多くの方々にガーデンギャラリーを知ってもらうことを目指しています。この計画に基づいて、各イベントを戦略的に配置し、年間を通じて継続的な集客を図っています。

しかし、現状ではイベントの認知度がまだ十分に上がっておらず、その改善が大きな課題となっています。具体的には、広報活動の強化やSNSを活用した情報発信の工夫が必要です。

さらに、イベント自体の質をより向上させたいと思っています。来場者の満足度を高めるには、イベントの企画段階から綿密な計画が求められます。例えば、アンケートを通じて来場者のニーズや意見を収集し、それを基にイベント内容を改善することが重要だと思っています。他の成功事例から学ぶことで、より魅力的なイベントを提供できるよう努めていきたいです。

edit & write: yoko sueyoshi
photo : hideki ookura
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