光の演出には、空間の印象を一瞬で変え、観客の心を動かす力があります。こうした体験の質を形づくる光の価値は、いま世界各地の現場で着実に進化しています。その進化を最前線で見つめてきたのが、テクノロジーを駆使した新たな表現を追求するクリエイティブ集団「MPLUSPLUS(エムプラスプラス)」のCEOとして、光による表現の開拓に取り組む藤本実さんです。
海外のフェスティバルやアートイベント、インスタレーションへの参加を通じて、光が空間と観客の感情にどんな変化をもたらすのかを探求してきました。そんな藤本さんが実体験で得た知見をもとに、イベントの企画や演出の次の一手として取り入れられる光演出のヒントをお届けします。
海外のフェスティバルやアートイベント、インスタレーションへの参加を通じて、光が空間と観客の感情にどんな変化をもたらすのかを探求してきました。そんな藤本さんが実体験で得た知見をもとに、イベントの企画や演出の次の一手として取り入れられる光演出のヒントをお届けします。

藤本実(Minoru Fujimoto)1983年生まれ。ダンサーとして活動しながら、神戸大学大学院でウェアラブルコンピューティングを研究、2012年3月に博士(工学)を取得。東京工科大学での教員経験を経て、2013年にMPLUSPLUSを設立。身体性を活かした光表現のシステム開発と舞台演出を手がけ、東京2020パラリンピック開会式ではLEDコスチュームの制作と光の演出を手がけた。2022年にAmerica’s Got Talentに出演。2025年4月より武蔵野美術大学客員准教授。
「光を見る」から「光の中にいる」へ。ラスベガス「Sphere」が示した没入演出の到達点
コロナ禍が落ち着いたここ3年ほど、私は多くの時間を海外の視察に費やしてきました。音楽フェス、アワードショー、クラブまで、光がどのように使われ、どんな体験を生んでいるのかを、自分の目と身体で確かめたかったからです。そのおかげで光の演出のトレンドを立体的に掴むことができました。
その中でも、強く記憶に残ったのが2023年9月にラスベガスで開業した「Sphere(スフィア)」です。建物全体がLEDで覆われ、360度の音響を備えた巨大な球体アリーナで、外壁と内部の超高精細LEDが音や演出に合わせて変化し、体験者はデバイスの装着なく深い没入体験を得ることができます。
その中でも、強く記憶に残ったのが2023年9月にラスベガスで開業した「Sphere(スフィア)」です。建物全体がLEDで覆われ、360度の音響を備えた巨大な球体アリーナで、外壁と内部の超高精細LEDが音や演出に合わせて変化し、体験者はデバイスの装着なく深い没入体験を得ることができます。


Sphereの外観。ドームの外側も高精細なディスプレイになっている(提供:MPLUSPLUS)
ドームの中に初めて入ったとき、「ディスプレイで実現できる光の演出の完成形を見た」と思いました。自分の視界に入るものすべてがディスプレイで構成されているのに、不思議なことに画面を見ている感覚がまったくありません。通常なら近くで見ると分かるはずの粒状のピクセルが消え失せ、ただ圧倒的な映像空間の中に放り込まれたような感覚になりました。
宇宙船の窓から惑星を見ている感覚と言えばいいでしょうか。ラスベガスまで行くのに数十万円かかりますが、「数千万円かかる宇宙旅行をしてきた」と思えるほどの体験でした。研究者としてXRやAR、VRにも長く関わってきましたが、世界中の研究者やクリエイターが「本当はこういう体験を作りたかったのではないか」と思えるくらいの答えが、Sphereにはありました。
宇宙船の窓から惑星を見ている感覚と言えばいいでしょうか。ラスベガスまで行くのに数十万円かかりますが、「数千万円かかる宇宙旅行をしてきた」と思えるほどの体験でした。研究者としてXRやAR、VRにも長く関わってきましたが、世界中の研究者やクリエイターが「本当はこういう体験を作りたかったのではないか」と思えるくらいの答えが、Sphereにはありました。

ドームの内側。ド迫力の映像が観客を包み込む(提供:MPLUSPLUS)
これまでライブ演出の世界では、ディスプレイをどれだけ大きく、高精細にできるかという勝負がずっと続いてきました。ドームツアーでも、昔は造形物やセットの中でライブをしていましたが、大きなディスプレイをいくつも配置して、アーティストの顔や映像を映すスタイルが主流になりました。
ディスプレイの大型化・高精細化がひと段落した段階になり、「その上に何を足すか」という発想が一気に加速しました。映像にレーザーを連動させたり、光線の動きと映像のモーションを完全に同期させたりと、映像演出にとどまらない試みが、世界の現場で一気に広がり始めました。
こうしたアプローチ自体は、もともとメディアアートの領域では長く探求されてきたものです。しかし、この数年で、その発想が大規模フェスティバルやメジャーなライブシーンに急速に流れ込んできました。従来はデジタルアートの文脈で行われていた表現が、メジャーシーンに堂々と登場し始めたという感覚があります。ここ最近、特にその変化を強く実感しています。Sphereでディスプレイでの映像表現が完結し、ディスプレイの外の表現が求められているのかなと思います。
ディスプレイの大型化・高精細化がひと段落した段階になり、「その上に何を足すか」という発想が一気に加速しました。映像にレーザーを連動させたり、光線の動きと映像のモーションを完全に同期させたりと、映像演出にとどまらない試みが、世界の現場で一気に広がり始めました。
こうしたアプローチ自体は、もともとメディアアートの領域では長く探求されてきたものです。しかし、この数年で、その発想が大規模フェスティバルやメジャーなライブシーンに急速に流れ込んできました。従来はデジタルアートの文脈で行われていた表現が、メジャーシーンに堂々と登場し始めたという感覚があります。ここ最近、特にその変化を強く実感しています。Sphereでディスプレイでの映像表現が完結し、ディスプレイの外の表現が求められているのかなと思います。
世界の街とクラブで体感。光は照明を超えて、空間をつくる素材へと進化
オーストラリア・シドニー全体を舞台にした光の祭典「Vivid Sydney(ビビッド・シドニー)」でも、光表現の進化を象徴するような変化が見られました。Vivid Sydneyは、街中の建物や湾岸エリアがライトアートやプロジェクションで彩られる、世界的にも注目度の高い都市型アートイベントです。世界中のアーティストたちが新しい光表現を持ち寄り、都市空間を実験場のように使いこなします。

Vivid Sydneyの様子(提供:MPLUSPLUS)
私が訪れた際、特に印象的だったのは、街の光の質感がこれまでとは大きく変わっていたことでした。かつては粒状のLEDが一般的でしたが、ネオンのような滑らかな光を放つLEDチューブが一気に普及し、街の光の多くがチューブ型へと置き換わっていました。
粒が見えない一本のラインとして光が流れ、建物の壁をなぞり、木々を包み込み、橋の輪郭を描き出していく。チューブの中を光が巡りながら、都市の輪郭そのものを描き換えていくようでした。点の集合としての光から、滑らかで連続的な線の光へ。街全体の解像度が一段上がったような感覚を覚えました。
粒が見えない一本のラインとして光が流れ、建物の壁をなぞり、木々を包み込み、橋の輪郭を描き出していく。チューブの中を光が巡りながら、都市の輪郭そのものを描き換えていくようでした。点の集合としての光から、滑らかで連続的な線の光へ。街全体の解像度が一段上がったような感覚を覚えました。


Vivid Sydneyで多用されていたLEDチューブ(提供:MPLUSPLUS)
もう一つ、スペイン・イビサ島にあるクラブで目にした光景についても触れておこうと思います。ステージのディスプレイからそのままLEDが天井方向に伸びていて、映像の動きが立体的な光として空間に流れ出していく演出です。映像と光が分離せず、空間の中でつながり合いながら動くことで、演出全体が一段と立体的になっていました。

イビサ島のクラブ。ステージのディスプレイからLEDが天井方向に伸びている(提供:MPLUSPLUS)
クラブの中はほとんど真っ暗で、レーザーだけが動いていたんです。通常、レーザープロジェクターって壁や天井など固定された場所から照射されますが、そのイベントでは、途中から空間にレーザープロジェクターが降りてくるんです。
空間に浮かんでいるミラーボールに反射された光がフロアを照らすように、空中のまったく何もない場所からレーザーが突然放たれる。暗闇の中で、存在しないはずの一点から光の線がいきなり走り出すんです。
「レーザーは端から出るもの」という前提が完全に崩れる瞬間で、視界の中にありえない光が現れる。その違和感がとにかく強烈で、「なんだこれは……」という衝撃がありました。
空間に浮かんでいるミラーボールに反射された光がフロアを照らすように、空中のまったく何もない場所からレーザーが突然放たれる。暗闇の中で、存在しないはずの一点から光の線がいきなり走り出すんです。
「レーザーは端から出るもの」という前提が完全に崩れる瞬間で、視界の中にありえない光が現れる。その違和感がとにかく強烈で、「なんだこれは……」という衝撃がありました。

イビサ島のクラブ。強烈なインパクトのレーザー演出(提供:MPLUSPLUS)
その他にも、メディアアーティストのボリス・アケットの作品が話題でした。会場全体に薄い布が天井から吊り下げられ、その布がふわりと浮かび上がるたびに光が当たり、空間が呼吸しているような演出が生まれていました。
その幻想的な空間の中で、世界的アーティストのフレッド・アゲインがDJプレイをしており、映像と音が一体となる特別な体験を創り出していました
こうしたかたちで音楽家とメディアアーティストが本格的に共演する例は、以前はそれほど多くありませんでした。これまでは、世界的アーティストであっても映像ディレクターに依頼して「巨大な画面に映像を流す」ことが一般的だったと思います。
しかし近年は、空間全体を素材として扱うメディアアーティストが、フェスやライブの現場に積極的に参加するようになり、表現の幅が一気に広がってきました。ディスプレイに映像を投影するだけのスタイルから脱し、空間そのものを変容させる演出が求められるようになったことで、メディアアーティストやデジタルアーティストの価値が大きく高まっています。
その幻想的な空間の中で、世界的アーティストのフレッド・アゲインがDJプレイをしており、映像と音が一体となる特別な体験を創り出していました
こうしたかたちで音楽家とメディアアーティストが本格的に共演する例は、以前はそれほど多くありませんでした。これまでは、世界的アーティストであっても映像ディレクターに依頼して「巨大な画面に映像を流す」ことが一般的だったと思います。
しかし近年は、空間全体を素材として扱うメディアアーティストが、フェスやライブの現場に積極的に参加するようになり、表現の幅が一気に広がってきました。ディスプレイに映像を投影するだけのスタイルから脱し、空間そのものを変容させる演出が求められるようになったことで、メディアアーティストやデジタルアーティストの価値が大きく高まっています。
振り切り方が異次元!常識を塗り替えていく世界のライブ演出
新しさだけではなく、これまでの常識とされていた光の演出のアップデートが世界各地で起きています。「空間そのものをどう変容させるか」という発想が急速に進化し、光に関する技術の使われ方も桁違いになってきました。
この1〜2年、いくつかの現場を訪れる中で、これまで思い描いていた限界がいとも簡単に超えられていくのを目の当たりにし、「ライブとはここまで拡張できるのか」と衝撃を受ける場面が何度もありました。
その象徴ともいえるのが、まずオランダの世界最大規模のハードテクノフェスティバル「Verknipt」での体験です。2025年7月に、レーザー1000台を使ったギネス記録への挑戦が行われていました。日本では、レーザーを数十台使うだけでも「かなり頑張った演出」と言われる世界です。それが1000台です。数字だけ聞くと狂気じみていますが、現場で体験してみると、「空間を光で埋める」とはこういうことかと納得させられます。
この1〜2年、いくつかの現場を訪れる中で、これまで思い描いていた限界がいとも簡単に超えられていくのを目の当たりにし、「ライブとはここまで拡張できるのか」と衝撃を受ける場面が何度もありました。
その象徴ともいえるのが、まずオランダの世界最大規模のハードテクノフェスティバル「Verknipt」での体験です。2025年7月に、レーザー1000台を使ったギネス記録への挑戦が行われていました。日本では、レーザーを数十台使うだけでも「かなり頑張った演出」と言われる世界です。それが1000台です。数字だけ聞くと狂気じみていますが、現場で体験してみると、「空間を光で埋める」とはこういうことかと納得させられます。

Verkniptのレーザー演出(提供:MPLUSPLUS)
ムービングライトの場合、一台につき一本の光線しか出せません。100台並べても100本です。一方レーザーは、一台から何十本もの線を描くことができるので、1000台もあれば1万本以上の光線が空間を駆け巡ります。暗い中に細い線だけが無数に走り、カーテンのような層になり、波のように揺れ動き、なんとも言えない感覚になります。
二次元の画像にすると、ただの光の筋の集合に見えてしまうのですが、実際には一人ひとりの観客の頭上すれすれを線が通り、前からも後ろからも横からも光がやってくる。自分の位置を少し変えるだけで、見える世界が大きく変わる。これは、リアルでしか成立しません。コロナ以降、「配信でいいよね」というムードが一部にありましたが、Verkniptでレーザーの中に立ったとき、「ああ、だから人はわざわざリアルな場所へ行くんだ」と改めて実感しました。
また、サウジアラビア「SoundStorm」は、スケールの概念を根本から変えられた体験でした。3日間で延べ20万人が集まり、会場の広さは東京ドーム20個分とも言われています。メインステージのLEDディスプレイは、私がこれまで見てきたドームツアーの横幅の、さらに倍ぐらいありました。音量もおそらく規制度外視の低周波が出ていて、ウーハーの当たりどころに立つと、体がドドドッと震えて動けなくなるような感覚になります。
二次元の画像にすると、ただの光の筋の集合に見えてしまうのですが、実際には一人ひとりの観客の頭上すれすれを線が通り、前からも後ろからも横からも光がやってくる。自分の位置を少し変えるだけで、見える世界が大きく変わる。これは、リアルでしか成立しません。コロナ以降、「配信でいいよね」というムードが一部にありましたが、Verkniptでレーザーの中に立ったとき、「ああ、だから人はわざわざリアルな場所へ行くんだ」と改めて実感しました。
また、サウジアラビア「SoundStorm」は、スケールの概念を根本から変えられた体験でした。3日間で延べ20万人が集まり、会場の広さは東京ドーム20個分とも言われています。メインステージのLEDディスプレイは、私がこれまで見てきたドームツアーの横幅の、さらに倍ぐらいありました。音量もおそらく規制度外視の低周波が出ていて、ウーハーの当たりどころに立つと、体がドドドッと震えて動けなくなるような感覚になります。

SoundStormのLEDディスプレイ(提供:MPLUSPLUS)
ここでも使われている技術そのものは、LEDディスプレイ、ムービングライト、レーザー、火、ドローンと、特別新しいものではありません。違うのは、それぞれの「振り切り具合」です。ディスプレイのサイズは常識の倍、音量も体験したことのないレベル、ドローンは3000機で、それをブルーノ・マーズの出番前のわずか5分間のためだけに使い、夜空に巨大な拍手のマークを描いていました。

SoundStormのドローン演出(提供:MPLUSPLUS)
余談ですが、VIPエリアはすべて歩道橋でつながっており、何万人もの一般客とは交わることなく移動できるよう配慮されているんです。会場の作り方から演出まで、「とにかく世界最大を目指す」というコンセプトが貫かれていました。
ドレスも旗も空もスクリーンになる。光る場所を変えるだけで、体験をアップデートできる
こうした海外の現場から学びながら、MPLUSPLUSとしてもさまざまなプロジェクトに取り組んできました。
ビヨンセのツアーでは、ANREALAGEさんとのコラボレーションで柔らかいドレスそのものをディスプレイ化した「光るドレス」を担当しました。以前から光る衣装は、数多く作ってきましたが、ライブ本番で激しく踊ると壊れやすいという課題が常につきまとっていました。LEDをライン状に衣装全体に縫い付けても、ちょっと強く曲がったり、しわが寄ったりするだけで断線してしまう。
「一回踊ったら壊れる」という状況を変えたのが、「壊れにくいLED」です。リボン状のLEDを千回叩きつけるようなテストをしても壊れないものができて、これなら衣装全体にびっしりLEDを貼ることが化できると判断しました。しわになっても大丈夫、屈曲しても問題ない。そのレベルまで来て、ようやくツアー全体を通して使える「光るドレス」が現実的になったのです。
ビヨンセのツアーでは、ANREALAGEさんとのコラボレーションで柔らかいドレスそのものをディスプレイ化した「光るドレス」を担当しました。以前から光る衣装は、数多く作ってきましたが、ライブ本番で激しく踊ると壊れやすいという課題が常につきまとっていました。LEDをライン状に衣装全体に縫い付けても、ちょっと強く曲がったり、しわが寄ったりするだけで断線してしまう。
「一回踊ったら壊れる」という状況を変えたのが、「壊れにくいLED」です。リボン状のLEDを千回叩きつけるようなテストをしても壊れないものができて、これなら衣装全体にびっしりLEDを貼ることが化できると判断しました。しわになっても大丈夫、屈曲しても問題ない。そのレベルまで来て、ようやくツアー全体を通して使える「光るドレス」が現実的になったのです。

日本のファッションブランド「ANREALAGE」のパリコレに登場した光るドレス©Koji Hirano (提供:MPLUSPLUS)
また、F1ラスベガスでは、開幕セレモニーで百人のパフォーマーが振る「光る旗」を担当しました。ここで強く印象に残ったのは、アメリカにおける旗の文化的な重みです。国歌の歌詞にもFLAGが出てきますし、カラーガードという旗を使ったパフォーマンスも根付いています。F1ラスベガスをきっかけに、世界最高峰のバスケリーグ(NBA)やアメフトのプロリーグ(NFL)など、さまざまなスポーツリーグから問い合わせが来るようになりました。

世界に見つかった、MPLUSPLUS発の光る旗(提供:MPLUSPLUS)
日本では「他チームと被らない演出をしたい」というニーズが強く、似たような演出は避けられがちですが、アメリカでは「他チームがやっていた演出が良かったから、自分たちもやりたい」という発想が強くあります。すでに旗を振る文化があるところに、光る旗をディスプレイ化して持ち込むだけで、自然に受け入れられる。これは「既存の文化を光でアップデートする」という、一つの有効なアプローチだと思います。
一方で、アメリカのスポーツ現場で課題になるのは、演出時間とオペレーションです。大学アメフトの試合では、選手紹介のための演出が1分、その後40秒以内に完全撤収しなければならないといったルールがあります。
そのような制約があっても使用できる6m×9mで、重さ35kgの超軽量のネット状のディスプレイを開発したことが強みになっています。通常のLEDディスプレイで同じサイズを作ると、電源周りを除いても1700kg近くになることもありますが、それを35kgまで落とし、スーツケース一つに収まるようにしたのです。
一方で、アメリカのスポーツ現場で課題になるのは、演出時間とオペレーションです。大学アメフトの試合では、選手紹介のための演出が1分、その後40秒以内に完全撤収しなければならないといったルールがあります。
そのような制約があっても使用できる6m×9mで、重さ35kgの超軽量のネット状のディスプレイを開発したことが強みになっています。通常のLEDディスプレイで同じサイズを作ると、電源周りを除いても1700kg近くになることもありますが、それを35kgまで落とし、スーツケース一つに収まるようにしたのです。

スポーツの試合での理想とされる演出を叶える超軽量ディスプレイ(提供:MPLUSPLUS)
現場では、10人ほどのクルーがフィールドに走り込み、一瞬でディスプレイを広げて演出を行い、そのまま10秒かからず折り畳んで走って退場していきます。こうした使われ方を想定して、くしゃくしゃに丸めても壊れない構造にし、雨天でも使えるように防水性も高めています。衣装やFLAGのために長年追求してきた「小さくて、軽くて、壊れにくい」という技術を、逆転させて「巨大だけど軽くて扱いやすいディスプレイ」に応用した形です。

実際の試合で使われている様子。左右で青く光るシートがディスプレイ(提供:MPLUSPLUS)
MPLUSPLUSが実施したドローンによる映像表現を拡張した「LED VISION DRONE」のプロジェクトでも同じ発想があります。空を飛ぶドローン自体をディスプレイ化し、空中に映像を描くことで、スタジアム全体を巻き込む演出を実現しています。ここでも、重量、電力、無線、耐久性といった制約をすべてクリアする必要がありますが、一度実現してしまえば、「空そのものがスクリーンになる」という新しい体験価値を生み出せます。

「LED VISION DRONE」を空中に浮かべている様子(提供:MPLUSPLUS)
こうした取り組みを通じて感じるのは、光の演出を最大化するカギは「どこに光を持ち込むか」「何を光らせるか」を徹底的に考えることだという点です。ディスプレイの枚数を増やすのではなく、旗、衣装、巨大布、ドローン、スポーツの道具など、すでに現場に存在している「象徴」を光でアップデートする。その方が、観客の印象にも残りやすく、オンライン配信では再現できない体験につながります。
最後に、イベントの演出を手掛けている皆さんへ
海外のイベントの現場を訪れると、光の演出が「画面を見るもの」から「空間そのものを体験するもの」へと急速に変わっていることを、肌で感じます。ラスベガスのSphereで平面ディスプレイの到達点を目の当たりにし、Vivid Sydneyやイビサ島で「空間を使う光の進化」を感じ、VerkniptやSoundStormで、「リアルでしか成立しない圧倒的な体験」の価値を突きつけられました。
同時に、衣装や旗、巨大布、ドローンといった「光の器」を変えることで、演出の可能性が一気に広がることも実感しています。もし、次のイベントやライブで「去年と同じことはしたくない」「配信では不可能な体験を作りたい」と感じているのであれば、まずは何か一つ、光の新しい要素を足してみるのはどうでしょうか。大きな投資や劇的な仕掛けでなくても、すでにあるものを光でアップデートするだけで体験は驚くほど変わります。日本のフェスやスポーツなど、あらゆるイベントの場で「心が震える光の体験」が広がることを楽しみにしています。
edit & write : yoko sueyoshi
photo : hideki ookura
同時に、衣装や旗、巨大布、ドローンといった「光の器」を変えることで、演出の可能性が一気に広がることも実感しています。もし、次のイベントやライブで「去年と同じことはしたくない」「配信では不可能な体験を作りたい」と感じているのであれば、まずは何か一つ、光の新しい要素を足してみるのはどうでしょうか。大きな投資や劇的な仕掛けでなくても、すでにあるものを光でアップデートするだけで体験は驚くほど変わります。日本のフェスやスポーツなど、あらゆるイベントの場で「心が震える光の体験」が広がることを楽しみにしています。
edit & write : yoko sueyoshi
photo : hideki ookura
