クライアントの世界観…

クライアントの世界観を体験に変える。食を起点に唯一無二の空間をデザインするトランジットクルーのクリエイティブ力

レストランはじめフードカルチャーを牽引してきたトランジットグループから派生したトランジットクルー。少数精鋭でスタートした小さなケータリング事業が、いまではラグジュアリーブランドからも厚い信頼を寄せられる「体験プロデュースの会社」へと成長しました。

同社が大切にしてきたのは、ケータリングを料理の提供で終わらせないこと。ブランドの世界観やイベントのテーマに合わせて、食・音楽・空間・キャスティング・サービスを一体としてデザインし、「その日ならではの体験」をつくり上げてきました。

そのこだわりと姿勢は、どのようにして今のトランジットクルーを形づくってきたのでしょうか。CEOの藤阪敏至氏と、キャスティング部事業部長・宮本昌浩氏に、これまでの歩みと、これから描く未来について伺いました。

ルーツは数人のケータリング事業部。「得意×好き」が事業領域を押し広げた

――まず、会社の成り立ちから教えてください。

藤阪:もともとのルーツは、トランジットグループの「ケータリング事業部」にあります。カフェとレストランの運営から派生するかたちで、ケータリングを手がけるようになりました。ただ、当時は「お店の延長線で外にも料理を持っていく」という感覚に近かったですね。

その後、大きな転機になったのが、ホテル事業として手掛けた「CLASKA(クラスカ)」です。ホテルのギャラリーを使ったウェディングやイベントが急激に増え、ケータリングの規模が一気に大きくなりました。ホテルのキッチンが、そのままケータリングのメインキッチンになっていったイメージです。

――そこから、現在のトランジットクルーへと分かれていったのですね。

藤阪:トランジットクルーとして法人化したのが2008年です。当時、「店舗部門とイベント部門をきちんと分けた方がいいのではないか」という議論があり、ケータリング事業部の子会社化が決まりました。

事業領域は、最初からきれいに設計されていたわけではなくて、いい意味で「人のキャラクターに引っ張られて広がってきた」というのが正直なところです。会社がまだ本当に数人規模だった頃、集まっていたメンバーのバックグラウンドや興味がそのまま事業を押し広げていった、という方が近いですね。

前任の代表は元・大手百貨店の出身で、興行やイベント企画のノウハウを持っていましたし、当時は音楽事業部も存在していて、CD制作まで手がけていました。そのメンバーは今も一緒に仕事をしていて、音楽事業部がそのまま「キャスティングチーム」へと変化しています。アーティスト手配やパフォーマーのコーディネートなど、イベントに不可欠な“人の演出”を担う部門として成長した形です。

こうした「個の得意」がそのまま事業になっていく流れが重なり、ケータリングだけではなく、空間演出、キャスティング、ディレクション……と、総合的にイベントをプロデュースする現在のスタイルが自然と形成されていきました。

CEOの藤阪敏至氏

――ケータリングだけではなく、「イベント全体を仕立てる会社」へと変わってきたわけですね。

藤阪:そうですね。クライアントの中には、料理の彩りの葉一枚まで、どう使うかオーダーされるクライアントもいらっしゃいますし、コレクションテーマと食の世界観をどうつなぐかを問われることもあります。ただ、クライアントは必ずしも「食のプロ」ではありません。だからこそ、私たちの重要な役割は、ブランドの世界観を食という体験に落とし込む「コンセプトメイク」です。

また、クライアントが明確な世界観ややりたいことを持っているケースもあります。その解像度に合わせてケータリングも設計しなければ、「記憶に残る食」にはならない。イベント自体は楽しかったけれど、食事の記憶が残っていないと、帰宅後に家族や友人に話題として共有されることもありません。食もまたイベントの「フック」でなければいけない、というのが私たちの基本スタンスです。

アカウントチームがブランドの意図を咀嚼し、キッチンチームがゼロから100まで料理として立ち上げ、現場のサービススタッフがそれを120%に引き上げて、お客様の前でプレゼンテーションする。その一連のプロセス全体が、私たちのケータリングなんです。

食・演出・サービスを一体化する。理想を体験に翻訳することで違いを生む

――「空間を彩る」というコンセプトを掲げられている理由について、詳しくご説明いただけますでしょうか。

藤阪:ケータリングは、いわゆる「仕出し」のように、料理を届けて終わりというイメージが強いですよね。そうしたスタイルのサービスは多いと思います。もちろん、おいしい料理だけを提供できる会社は、世の中にたくさんあります。

一方で、私たちが向き合っているのは「食そのもの」だけではなく、音楽や内装など、さまざまなクリエイティブが交差するイベント空間です。その中で、食は空間を彩る大きな要素になり得ます。

だからこそ、料理の味だけで完結させるのではなく、給仕するスタッフのビジュアルや所作、サービスのオペレーションも含めて「一つのクリエイティブ」として設計する。食を通じて、空間全体の体験をデザインしていく、というのが私たちの基本的な考えです。

社内には飲食の現場経験が長いメンバーが多く、いただくオーダーも食を起点にしたものがすごく多いんです。イベント全体のオーガナイズやプロデュースをご依頼いただく場合でも、「食から派生して広がっていく」案件が多いですね。
――トランジットクルーのケータリングは、色味やデザイン、場との調和を含めて「何か違う」と感じます。その違いはどこにあるのでしょうか。

藤阪:私はサービス側の人間なので、どちらかというと「人」が空間に与える影響を重視しています。たとえば、サービススタッフが醸し出す空気感や、お客様にどう話しかけるのか、どう振る舞うのか。そうしたコミュニケーションや所作こそが、空間を彩る一番の要素になると考えています。

宮本:トランジットグループ全体がファッション領域に強いバックボーンを持っているので、その影響も大きいと思います。私はずっと飲食ですが、藤阪はファッション寄りのバックグラウンド。キャラクターがかなり違うんですよね。

私自身、飲食店で働いていた頃に初めてケータリングの現場を見に行ったとき、昨日のパーティーと同じメニューがそのまま出ている光景を目にしたことがあります。そこに「イベントとしての工夫」を感じることはできません。

私たちが大事にしているのは「同じメニューを出さない」「同じ見せ方をしない」ことです。来場者が座れるのか、立食なのか、テーブルの配置はどうかなど、会場条件やゲストの属性によってメニュー構成や提供方法を変えていきます。

キャスティング部事業部長 宮本昌浩氏

藤阪:私たちの得意領域で言えば、オペレーション、ホスピタリティ、コミュニケーションを通じて、クライアントが形にしたい世界観をきちんと具現化していくこと。これは間違いなく強みだと思っています。

それから一つはっきり言える差別化要素があるとすれば、「ファッションへの感度」です。宮本のように、食のバックボーンがありつつ、ファッションにも強い興味を持っているケータリングの人間って、実はかなりレアケースなんじゃないかと思っています。

私たちの場合、ファッションのバックグラウンドや感度を持つメンバーがいることで、「ブランドとして何を表現したいか」をかなり高い解像度で理解し、それを食やサービスに翻訳できている。クライアントも、「トランジットクルーに伝えれば、ブランドとして表現したいことを汲んでくれる」と感じてくださっているのではないかと、勝手ながら思っています。

――時代のニーズやトレンドを取り入れたサービス提供も重視されている印象です。そうした姿勢を支えるポリシーや企業としてのスタンスがあれば教えてください。

藤阪:トレンドは、常に意識しています。ただ、私たちが売っているものはあくまで「食」と「サービス」です。世の中にはさまざまな形のクリエイティブがありますが、私はサービスも料理も企画も、すべてクリエイティブだと考えています。

クリエイティブと表現すると聞こえはいいかもしれませんが、正直なところ「面倒くさいこと」をいとわない覚悟が必要になります。今の時代、Webやチャットツールを使えば、多くのことが効率よく進められます。ただ、テキストだけのやりとりは一方通行になりやすく、温度感が伝わりにくい。だからこそ、私は「とりあえず会いに行く」「電話をする」といったアナログなコミュニケーションを大事にしています。

特に若いメンバーには、「面倒くさいことを面倒くさがらずにやろう」とよく伝えています。そこにこそ、本当のニーズや機微が隠れていることが多いからです。
宮本:少し視点がずれるかもしれませんが、企業理念やポリシーの話でいうと、トランジットグループ創業者の中村が書いた『中村貞裕式 ミーハー仕事術』という本が象徴的かなと思っています。私たちは、「ミーハーであること」を肯定している会社なんです。

イベントの仕事は、いつも最新のものに触れる仕事でもありますよね。浸透しきったものではなく、「今これが来ている」「まだ誰もちゃんと形にしていない」ものを扱う。それを面白がれるかどうか。

食でも同じで、話題になっている店があればとりあえず行ってみる。「なぜここまで人気なのか」を、自分の目と舌で確かめに行く。お腹を満たすためではなく、情報収集として動くメンバーが多いです。

藤阪:宮本の話に付け加えると、私たちの役割は、ミーハー的に最先端を追いかけるだけでなく、クライアントの「変わらない核」を理解した上で、今の時代に合った形で表現し直すことです。表面的な流行をなぞるだけなら、誰にでもできてしまう。

だからこそ、自分たちのフィルターを通して解釈し直し、「らしさ」を加えた上でアウトプットしていく。そのひと手間が、トランジットらしさなんだろうなと思っています。

創業メンバーとして多様な領域に挑戦してきた二人。好奇心を起点にした積み重ねを、唯一無二の専門性へと昇華している

タレント性が現場をつくる。多様な人材の魅力と新領域への挑戦

――トランジットクルーには、「多彩なタレント性を持つ人材」が多いと伺いました。具体的には、どのような方々が働いているのでしょうか。

藤阪:現場でサービスを担当するメンバーは、本業を別に持っているケースが多いです。俳優、モデル、ミュージシャン、アーティストなど、それぞれが自分の夢を追いながら、トランジットでも働いてくれています。「やりたいことがある」「自分の世界観や軸を持っている」という時点で、すでにタレント性を兼ね備えていると思うんです。

そういう人たちを、イベントスタッフとして動かしていくことで、初めて立ち上がるタレント性がある。無秩序に見える個性を、一本のラインで束ねると、独特のエネルギーが生まれる感覚があります。
――そうした方々が現場に立つと、どのような違いが出てきますか。

藤阪:一番は「出す空気」が違います。一人ひとりの個性と自信の積み重ねが、「トランジットに任せれば安心」という感覚に繋がっているのかなと思います。

宮本:キャラクターの強さはもとより、表現力や接客への興味がすごく高いメンバーばかりです。そういう人たちは、お客様をよく観察して、自分から一歩踏み出して動いてくれることが多い。細かく指示しなくても、ひと手間かけてくれるところが、現場で効いていると感じます。

――採用やキャスティングも、「トランジットクルーらしさ」に合うかどうかが重要になりそうですね。

藤阪:「トンマナを合わせる」という言い方をしていますが、キャスティングチームは、一人ひとりのキャラクターや適性を現場のフィードバックからログ化しています。ホスピタリティが高い人、オペレーションに強い人などを10項目ほどで見える化しています。

そのため、「イベントのサービススタッフに10人必要」というときでも、基本はバイネームでアサインします。自社でキャスティングチームを抱えている意味は、内面や相性も踏まえて最適な現場に送り出せることだと思っています。
――ケータリングやイベント事業とは別に、ドアマン事業も手掛けていらっしゃいますが、こだわりについて教えてください。

藤阪:ドアマンは、ラグジュアリーブランドのアパレルショップの入口に立つ存在で、「ブランドの顔」です。イベントスタッフとは違って一人現場が基本なので、きちんとしたマニュアルを用意しています。

ただし、型にはめるというより「ブランドが大切にしていることをどう体現するか」を共有するイメージです。マネージャーはメンターのように日々対話し、不満や悩みにも耳を傾けながらクオリティを維持しています。

誰でもドアは開けられますが、「どれだけ美しく、世界観にふさわしく、そしてお客様とのファーストタッチを大事に接するか」がドアマンの仕事。指先ひとつの動きで印象が変わります。そこまで含めてブランドの一部だと捉えています。

――最後に、今後の挑戦について教えてください。

藤阪:ケータリングはファッション・車・ビューティ領域を中心に17年続けてきて、ノウハウをかなり蓄積してきました。今後はそれを生かして「スポーツホスピタリティ」に力を入れていきたいと思っています。

オリンピック以降、スポーツとホスピタリティを掛け合わせた取り組みが増えており、テニスやゴルフツアーなどにも少しずつ関わり始めています。スタジアム全体の運営ではなく、VIPルームなどラグジュアリーなスポットで、これまで培ってきたサービス力を生かしたい。「価格勝負ではないチーム」としてマーケットの一部を担いたいと考えています。ラグジュアリー領域でしっかり価値を出し、業界全体の底上げに少しでも貢献できればいいなと思っています。

スポーツ以外の領域もさらに伸ばしたいと考えています。受付、誘導、ゲストエスコート、場内ディレクションなど、イベントを構成するオペレーション領域全体をトランジットのコンテンツとして強化していきたいです。

キャスティングチームはこれまで人を供給することがメインでしたが、今後は「運営そのもの」を受けられる体制にも挑戦したいと思っています。食・音楽・ドアマンだけでなく、イベントの動線設計やフロアマネジメントなども含めて、トランジットらしい体験設計の提供を目指していきます。

<本記事はPR記事です>
edit & write : yoko sueyoshi
photo : hideki ookura
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