1892年創業の乃村工藝社は、舞台の道具方からスタートし、商業施設・博覧会・ホテル・科学館・ワークプレイスなど幅広い空間づくりを手がけてきました。現在は企画、デザイン・設計、制作・施工に加え、運営までを一貫して行い、全国で約20施設を自社運営。年間1万件を超えるプロジェクトと600名のクリエイターによる総合力が強みです。
そんな同社が2022年に設立したのが、「未来創造研究所」です。他企業や研究・教育機関と連携しながら空間づくりのR&Dを推進。社会課題を先取りし、空間の新しい価値を実装することを目指しています。どのような活動を展開しているのか、未来創造研究所に所属するデザイナーの吉田敬介さんと鈴木和真さんに詳しく聞きました。
そんな同社が2022年に設立したのが、「未来創造研究所」です。他企業や研究・教育機関と連携しながら空間づくりのR&Dを推進。社会課題を先取りし、空間の新しい価値を実装することを目指しています。どのような活動を展開しているのか、未来創造研究所に所属するデザイナーの吉田敬介さんと鈴木和真さんに詳しく聞きました。
研究と実装を行き来しながら、空間の未来を構想する
――まず、未来創造研究所とはどのような組織なのか、教えてください。
吉田:未来創造研究所は、社会がこれから必要とする空間を先回りで構想し、実験・実装していくための研究開発組織です。いくつかの専門チームで構成されていて、メンバーの興味関心にもとづいて、多種多様なテーマで研究を進めています。
たとえば、サステナブルデザインを扱うチームでは、環境負荷の少ない素材を調査・収集し、乃村工藝社の空間づくりに実装しています。他にも、当社のミッションである「歓びと感動」について、空間と人の感情や行動について、科学的・学術的なアプローチで研究するチーム※や、センサー技術を起点に多様な人が文化体験を楽しめる展示を開発するチームもあります。傾向としては、空間と人の関係性を探るテーマが多いですね。
「空間における歓びと感動とは何か」という問いに挑む新しい研究の記録
『空間の歓びと感動学』
https://www.nomurakougei.co.jp/news/page/7407/
私と鈴木が所属する「NOMLAB(ノムラボ)」は、プロトタイピングを通じて未来の空間を研究する実験的なチームです。デザイナー、エンジニア、プランナーなど多様な専門性を持つメンバーが集まり、自ら仮説を立て、実証することを重視しています。案件が始まってから技術を探すのではなく、先に仮説を立て、試し、成果をストックしておくことで、次のプロジェクトをより高いレベルからスタートできるようにしています。
吉田:未来創造研究所は、社会がこれから必要とする空間を先回りで構想し、実験・実装していくための研究開発組織です。いくつかの専門チームで構成されていて、メンバーの興味関心にもとづいて、多種多様なテーマで研究を進めています。
たとえば、サステナブルデザインを扱うチームでは、環境負荷の少ない素材を調査・収集し、乃村工藝社の空間づくりに実装しています。他にも、当社のミッションである「歓びと感動」について、空間と人の感情や行動について、科学的・学術的なアプローチで研究するチーム※や、センサー技術を起点に多様な人が文化体験を楽しめる展示を開発するチームもあります。傾向としては、空間と人の関係性を探るテーマが多いですね。
「空間における歓びと感動とは何か」という問いに挑む新しい研究の記録
『空間の歓びと感動学』
https://www.nomurakougei.co.jp/news/page/7407/
私と鈴木が所属する「NOMLAB(ノムラボ)」は、プロトタイピングを通じて未来の空間を研究する実験的なチームです。デザイナー、エンジニア、プランナーなど多様な専門性を持つメンバーが集まり、自ら仮説を立て、実証することを重視しています。案件が始まってから技術を探すのではなく、先に仮説を立て、試し、成果をストックしておくことで、次のプロジェクトをより高いレベルからスタートできるようにしています。

渋谷の展望施設「SHIBUYA SKY」や、「Shibuya Sakura Stage」、そしてメーカーのショールームやメディテーション施設など、多岐にわたる先端的な空間づくりをしてきた吉田さん。テクノロジーと空間を融合させることが得意なデザイナーとして、社外のアーティストとの共同プロジェクトにも多数参画。大阪・関西万博では、落合陽一氏が手掛けるシグネチャーパビリオン「null²(ヌルヌル)」の内装デザイン・設計を担当した
――なるほど。未来を見据えて、実験しながら答えをつくっているということですね。研究と実務の境界を越えた活動をされている印象です。なぜ、そうした活動が必要なのでしょうか。
吉田:デザイナーは常に新しい発想を取り入れながら空間をつくっていますが、同じものを繰り返しつくる仕事はほとんどありません。そのため、毎回初めて扱う技術や素材が出てきて、不確かな部分も多い。だからこそ、事前に研究として試しておくことが大切なんです。
未知の素材や技術を自分たちで検証し、手の感覚として理解しておくことで、現場で自信を持って使えるようになります。私自身、「これを自分の空間デザインに使いたい」と思いながら研究を進めています。
――2025年2月に、乃村工藝社台場本社に活動拠点「Creative Lab.」を開設されたそうですね。どのような場なのでしょうか。
吉田:Creative Lab.は、「研究」「発信」「交流」を一体化した、乃村工藝社ならではの活動拠点です。社員が空間に関する研究を行う場であると同時に、そこで得た成果を社内外に発信し、さらに外部との新たなつながりを生み出す「開かれた研究空間」として機能しています。
具体的な共同研究の実施以外にも、Creative Lab.で展示しているプロトタイプの見学や、年間を通して開催しているイベントや発表会などにも、社外の企業や教育機関、クリエイターなどが自由に参加できます。さまざまな取り組みを通じて共創の輪が広がっています。それにより、私たち自身の研究も、社内にとどまらず、さまざまなパートナーとのコラボレーションによって形づくられているのが特徴です。
吉田:デザイナーは常に新しい発想を取り入れながら空間をつくっていますが、同じものを繰り返しつくる仕事はほとんどありません。そのため、毎回初めて扱う技術や素材が出てきて、不確かな部分も多い。だからこそ、事前に研究として試しておくことが大切なんです。
未知の素材や技術を自分たちで検証し、手の感覚として理解しておくことで、現場で自信を持って使えるようになります。私自身、「これを自分の空間デザインに使いたい」と思いながら研究を進めています。
――2025年2月に、乃村工藝社台場本社に活動拠点「Creative Lab.」を開設されたそうですね。どのような場なのでしょうか。
吉田:Creative Lab.は、「研究」「発信」「交流」を一体化した、乃村工藝社ならではの活動拠点です。社員が空間に関する研究を行う場であると同時に、そこで得た成果を社内外に発信し、さらに外部との新たなつながりを生み出す「開かれた研究空間」として機能しています。
具体的な共同研究の実施以外にも、Creative Lab.で展示しているプロトタイプの見学や、年間を通して開催しているイベントや発表会などにも、社外の企業や教育機関、クリエイターなどが自由に参加できます。さまざまな取り組みを通じて共創の輪が広がっています。それにより、私たち自身の研究も、社内にとどまらず、さまざまなパートナーとのコラボレーションによって形づくられているのが特徴です。

開放的な空間には、実験中のプロトタイピングなどが並ぶ。研究拠点でありながら、どこか遊び心を感じる雰囲気が印象的
マテリアルから感情解析まで、まだ見ぬ空間を多角的に探る
――具体的には、どのようなことに取り組まれているのでしょうか?吉田さんと鈴木さん、それぞれの実験や成果について伺いたいです。
吉田:私が担当しているのは、コンピューターで数値制御された工作を使ってマテリアルの可能性を拡張する研究です。たとえば、温度によって色変化する塗料を用いて、自発光でなく、解像度を持たない、マテリアルそのものがビジョンになるようなプロトタイプをつくったことがあります。
吉田:私が担当しているのは、コンピューターで数値制御された工作を使ってマテリアルの可能性を拡張する研究です。たとえば、温度によって色変化する塗料を用いて、自発光でなく、解像度を持たない、マテリアルそのものがビジョンになるようなプロトタイプをつくったことがあります。

デジタルコントロールでマテリアルから新しい表情を引き出すことも、吉田さんが関心を寄せる研究テーマ
また、3Dプリントによるセラミックタイルの開発にも取り組んでおり、収縮しない焼成技術を活かして、立体的で自由な形状の内装材を制作しています。釉薬や職人技とデジタル造形を掛け合わせ、メーカーと共同で4〜5年かけて研究を続けています。

中国にあるVIP向けイノベーション施設のファサード。3Dプリンタの造形技術を応用し、デザインを生成。中国に古来から伝わる文様をモチーフに、タイルの1枚ずつの表面に15パターンの文様を描いた。内装建材への開発を目指している
鈴木:私が担当しているのは「emograf(エモグラフ)」というプロジェクトです。表情認識から感情を推測する技術自体は一般的になっていますが、それを空間デザインに応用できないかを探っています。たとえば、人の感情によって照明や映像が変化する、体験者の心に寄り添うような空間がつくれないか。その可能性を検証しています。

エンターテインメント領域を中心に、来場者の驚きや喜びをデザインする空間づくりを手がけている。ショールームや体験型展示など、人の感情を動かす仕掛けを得意とし、最近では、テレビ局のオブジェ制作などを担当。単なる演出にとどまらず、「人は本当に楽しんでいるのか?」という問いをもとに、感情を検知・可視化する仕組みの研究も進めている。空間の体験価値を科学的に捉え、次世代のエンターテインメントデザインを探求する研究者兼デザイナーである
――感情データを空間に生かす研究が進むと、今後どのような方向で活用できるのでしょうか?
鈴木:私の場合、二つの方向で研究を進めています。一つは、空間の課題を「感情の可視化」から発見するアプローチ。もう一つは、感情データをリアルタイムに反映させて演出を変化させるアプローチです。たとえば、国内男子プロバスケットボールリーグ、B.LEAGUEのシーズンで活躍した選手を表彰する「B.LEAGUE AWARD SHOW 2024-25」では、観客の笑顔が増えると照明が赤く変わる仕掛けを実装しました。盛り上がりの度合いをリアルタイムで可視化し、翌年の演出改善にもつなげられるデータを取得しました。
鈴木:私の場合、二つの方向で研究を進めています。一つは、空間の課題を「感情の可視化」から発見するアプローチ。もう一つは、感情データをリアルタイムに反映させて演出を変化させるアプローチです。たとえば、国内男子プロバスケットボールリーグ、B.LEAGUEのシーズンで活躍した選手を表彰する「B.LEAGUE AWARD SHOW 2024-25」では、観客の笑顔が増えると照明が赤く変わる仕掛けを実装しました。盛り上がりの度合いをリアルタイムで可視化し、翌年の演出改善にもつなげられるデータを取得しました。

表情認識で感情を推測する技術を、実際のクライアントワークで空間演出に生かした
2018年から継続している研究で、百貨店やショールーム、イベントなどでも活用しています。最近では「働く人の表情」も測定し、執務空間の心理的快適さを検証する実験にも展開しています。結果として、「やっぱりそうだよね」と納得できるデータもあれば、「意外と違った」という新しい発見もある。それが研究の面白さですね。
実は、emografにおける表情認識と感情推測のプログラム自体も、社外との共同チームで開発したのですが、類似の技術は他社も手掛けており、日進月歩で進化しています。私たちは技術を開発したいのではなく、あくまでも「技術を空間に応用すること」に重点を置いています。
実は、emografにおける表情認識と感情推測のプログラム自体も、社外との共同チームで開発したのですが、類似の技術は他社も手掛けており、日進月歩で進化しています。私たちは技術を開発したいのではなく、あくまでも「技術を空間に応用すること」に重点を置いています。
共に考え、共に試す。そこから始まる新しい空間づくり
――感情データを通じて人の体験そのものを設計するというのは、空間づくりの概念を拡張する挑戦ですね。クライアントワークにも、研究成果を応用しながら、より深い体験価値を提案していく流れが生まれているのではないでしょうか。
鈴木:そうですね。特に体験価値の向上という観点では、感情データを使った空間づくりは今後のクライアントワークに大きく生かせると感じています。たとえば、感情の揺れを細かく捉えることで、デザインの方向性を精緻に検証できるようになりますし、演出面では「人が一番感動している瞬間」に合わせて照明や音を変化させるような、よりリアルタイムな空間体験を生み出せると思っています。
――未来創造研究所では、どのような志向や問題意識を持つ企業・パートナーとの共創を期待されていますか?
吉田:「新しいことを一緒に考えたい」と考えていらっしゃる方と、新しい挑戦をしたいです。実際に、「技術や素材はあるけれど、それをどう体験や空間に落とし込めばいいのか分からない」という相談から一緒に考えるケースが増えています。
いまや多くのクライアントが「体験価値の向上」を求めていらっしゃいます。そのため、乃村工藝社の役割もこれまで担ってきた「内装としての空間づくり」から、「施設全体の活動そのものを豊かにするデザインをつくること」へと変化しています。未来創造研究所の取り組みは、その変化を科学的に分析し、研究成果をクライアントワークに還元するため検証する段階へと押し上げています。
私の主務はクライアントワークですが、未来創造研究所の所員としては、クライアントと受託先という関係とはやや異なり、共に実験しながら価値を見つけていく関係性を築いています。そこから新しいプロジェクトや事業が生まれることも多いです。最近では、研究をきっかけにホテルや展示空間の共創が始まることもあり、研究そのものが次のビジネスを広げる起点になっています。
研究と実践を行き来しながら、次の空間価値をどう創出するかーー多様なパートナーとのコラボレーションやオープンイノベーションを含めて、これからもその問いと向き合っていきたいと思っています。
<本記事はPR記事です>
edit & write : yoko sueyoshi
photo : hideki ookura
鈴木:そうですね。特に体験価値の向上という観点では、感情データを使った空間づくりは今後のクライアントワークに大きく生かせると感じています。たとえば、感情の揺れを細かく捉えることで、デザインの方向性を精緻に検証できるようになりますし、演出面では「人が一番感動している瞬間」に合わせて照明や音を変化させるような、よりリアルタイムな空間体験を生み出せると思っています。
――未来創造研究所では、どのような志向や問題意識を持つ企業・パートナーとの共創を期待されていますか?
吉田:「新しいことを一緒に考えたい」と考えていらっしゃる方と、新しい挑戦をしたいです。実際に、「技術や素材はあるけれど、それをどう体験や空間に落とし込めばいいのか分からない」という相談から一緒に考えるケースが増えています。
いまや多くのクライアントが「体験価値の向上」を求めていらっしゃいます。そのため、乃村工藝社の役割もこれまで担ってきた「内装としての空間づくり」から、「施設全体の活動そのものを豊かにするデザインをつくること」へと変化しています。未来創造研究所の取り組みは、その変化を科学的に分析し、研究成果をクライアントワークに還元するため検証する段階へと押し上げています。
私の主務はクライアントワークですが、未来創造研究所の所員としては、クライアントと受託先という関係とはやや異なり、共に実験しながら価値を見つけていく関係性を築いています。そこから新しいプロジェクトや事業が生まれることも多いです。最近では、研究をきっかけにホテルや展示空間の共創が始まることもあり、研究そのものが次のビジネスを広げる起点になっています。
研究と実践を行き来しながら、次の空間価値をどう創出するかーー多様なパートナーとのコラボレーションやオープンイノベーションを含めて、これからもその問いと向き合っていきたいと思っています。
<本記事はPR記事です>
edit & write : yoko sueyoshi
photo : hideki ookura

